北海道大学・東北大学・東京工業大学・大阪大学・九州大学の共同研究ネットワーク

物質・デバイス領域共同研究拠点

Research Highlights vol.1

物質・デバイス領域共同研究拠点/第2期のスタートにあたって

研究者が面と向かって、同じ時間、同じ場を
共有するという基本。

歴史から見えてくる、未来への光。

村松 淳司所長

多元研ができてから15年になりますが、その前には前身の研究所の歴史が60年続いています。その歴史の重さをあらためて大切にしていきたい。多元研には、先人たちが切り開いてきた多くの研究分野と、輝かしい研究成果が引き継がれてきている。その継承があるからこそ、いま資源から最先端材料までの垂直方向、そして無機、有機、バイオなどあらゆる物質材料を含む水平方向の両機軸を、ハイブリッドにカバーした独創的で斬新な研究が数多く生み出されているのだと思っています。

こうした優れた研究の集積は、また新たな研究者の参加や交流、そして連携やネットワークという次なる広がりへの芽生えともなっています。これらの多元研のムーブメントは、あらためて見てみても東北大学の研究第一、門戸開放、実学尊重という3つの理念に深く合致していることです。多元研というのは、さまざまな研究領域、さまざまな学際分野を扱うことによって、内側に情報を抱え込むというより、いつも外側に開かれているという体質が色濃くあります。共同研究のあり方についても、それは大きな特徴づけになることではないかと思っています。

多元研のほか、北海道大学電子科学研究所、東京工業大学資源化学研究所、大阪大学産業科学研究所、九州大学先導物質化学研究所という全国5つの研究所が参画する「物質・デバイス領域共同研究拠点」は、平成22年度から始まった先駆的なネットワーク型共同研究の一つの形です。これまで大阪大学産業科学研究所が本部の役割を果たしてきましたが、28年度からは多元研が本部となり第2期を迎えることになります。

そのスタートに際して、基本的なテーマを提示したいと思います。それは研究のネットワークづくりは、人のネットワークづくりだということです。5つの研究所によるネットワークが始まる、さらにその前には、実は東北大と大阪大産研とが大学の枠を超えてコラボレーションしていました。そのベースにあったのは人的交流、人のつながりでした。そういう交流が土台としてあって、やがて5つの研究所に広がっていったんです。

共同研究の担い手とは人であり、人が研究を動かしていくので、5研究所ネットワークにおいても、そこがいちばんの土台になります。海外のどこかで多元研の研究者が、他の研究所の研究者と会った時にすぐに話ができる、それぐらいの顔の見える関係、face to face の関係ができていることがいちばんいい。そのために共同研究拠点では、このネット時代に逆行するようですが、十分な出張旅費を支弁できるような体制にあります。研究者が面と向かって、同じ時間、同じ場を共有するということが重要だと思っています。

第2期がスタートするにあたって2016年4月に東北大でキックオフミーティングを予定しています。5研究所以外のところの研究者なども含めて300人規模になると見込んでいます。もちろん参加できない人にはインターネット中継もします。東北大の中では多元研だけではなく、金研、通研、流体研、加齢研などの研究者にも集まってもらいます。つまり東北大という大きいリングの中に小さいリングが入る、その小さいリングが大きいリングを介して、また別の小さいリングとつながることができるというイメージです。大きいリングの仕組みをつくったのはわれわれなので、今度はそれをどう広げていくか、次の人たちに向けてどう残していくかが、これからの課題だろうと思っています。

ひとりで研究する時代ではない。
広い世界との流動的な交流から最先端への光が見えてくる。

これからも科学技術が日本を先導していくために。

これから学生が少なくなる、研究者が少なくなると言われる中で、一方では日本が世界の中でどのような役割を果たしていけるのかと視野を広げていかなければいけない。それを考えた時に、これからは人材育成が最大のテーマだろうと思います。次に活躍する人が、活躍する場を、どうつくってやれるのかということがわれわれの役目だろう。人のネットワークづくりを通して、その先に何を見ているかというと、それは人材育成だと言うことができます。共同研究拠点という仕組みを前にして、すぐに研究の成果を求めるという目先のことにとらわれがちですが、仕組みが成果を生むわけもなく、その成果を生み出す人をつくっていく、育てていくことが大事だと思っています。

今回の「アライアンス」の中では、大学院生が自分で提案して研究を推進していける枠組みをつくりました。今までは大学の職員が手を上げて何をするか決める、院生はそれに従う、通常はそうでないと無理だったんですが、これからは院生にまかせる。その上の人たちがサポート側に回ります。これからわれわれが主導して動かしていくこの共同研究拠点ネットワークについて、われわれは人材育成の場として考えている、と言い切ってもいいと思います。研究成果というのは二次的なもので、あまり心配はしていません。

共同研究拠点とアライアンスの関係ということで少し補足しますと、予算は別々ですが同じ枠組みの中のもので、別々に切り離して考えるものではないと考えています。先ほどのリングにたとえるなら、共同研究拠点は大きいリング、アライアンスは小さなリングととらえてもいい。大きいリングはどちらかというと固定的、静的なもの。しかしアライアンスの方はもっと自由で、第三者が入ってもいい、大学院生も参加できる、年齢層もいろいろある、横軸も縦軸もさまざまできる。つまり流動的にいろいろなことができる、面白いコンテンツがたくさん生まれてくる可能性がある。それを全体で統括するのが共同拠点、という関係とイメージしてもらえればいいと思います。

小さい方のリングで何を期待しているかというと、研究を誰か別の人と協力して行ったり、あるグループで行ったり、研究室や大学や地域を超えた流動的な研究の仕方をさらに促進できるのではないかということ。自分の研究室単位で考えていると結局狭い世界になってしまいがちです。そうではなく、他の分野の研究者がいるところに出ていって交流しないといけない、いっしょにやらないとだめです。腹を割って交流したい、自分のところにないものを得たい、ということです。いま、ひとりで研究する時代は終わったと言ってもいい。先端的なものほど、研究の仕方はグループで進めることが多い。ノーベル賞も1人というのはほぼない、グループで受賞しています。

これから行おうとしているわれわれの試みとは、これからの日本の科学技術というものに、いったいどんな役割があるのかという問いに対するひとつの解答であり、情熱に満ちた気鋭の研究者を育成していくことによって科学技術立国日本を守っていくんだというひとつの重要なケーススタディである、と申し上げたい。そして、そういうわれわれの試みを多くの人にしっかり見えるように、惜しむことなく伝えていきたいと思っています。

Muramatsu, Atsushi

村松 淳司

物質・デバイス領域共同研究拠点 拠点本部長、
東北大学多元物質科学研究所 所長、
同ハイブリッドナノ粒子研究分野教授。工学博士。

1959年愛知県生まれ、1983年東京大学工学部合成化学科卒業、1988年同大学院工学系研究科化学エネルギー工学専攻博士課程修了、1988年東北大学助手選鉱製錬研究所、2001年東北大学教授多元物質科学研究所。
日本学術会議連携会員、日本化学連合副会長、石油学会理事東北支部長、ナノ学会理事など。学内では情報戦略会議委員、広報戦略会議委員などを務める。

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