北海道大学・東北大学・東京工業大学・大阪大学・九州大学の共同研究ネットワーク

物質・デバイス領域共同研究拠点

Research Highlights vol.2

物質・デバイス領域共同研究拠点/第2期に目指していくこと

5研究所ネットワークは、
27年度期末評価で、最高ランクのS評価を得た

共同研究拠点はアライアンスの土台の上に。

垣花 眞人副所長

われわれのネットワーク型共同研究拠点は、日本の各地域を代表する5つの研究所(北海道大学電子科学研究所・東北大学多元物質科学研究所・東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所・大阪大学産業科学研究所・九州大学先導物質化学研究所)から成っています。この5研究所をネットワークで接続して、5研究所以外の国公私立大学やさまざまな研究機関、民間企業(基礎研究に限る)、海外研究機関の研究者・学生がアクセスできるようにしています。アクセスの許可を得た研究者・学生は、5研究所に行って設備を共同利用することができ、受け入れ側の研究者と共同研究を行うことができます。それぞれの研究所が得意とする分野があり、最先端の学術的知見や技術や情報が集約されています。一方足りない部分はネットワーク機能を活用し、ひとつの研究所では決して実現できない、世界をリードする研究を行うことができるようにした、日本で初めての仕組みなのです。

全国の複数の拠点がネットワークを組んで共同研究を行うというのは、実は日本に3例しかありません(平成28年度からは、新たに2例加わります)。実験系では、われわれのがいちばん大規模なものです。ネットワーク型共同研究拠点というのは、言うまでもなく、どうやってネットワークならではの仕組みや特徴をつくり出せるか、というところがポイントになります。われわれがどういう仕掛けをつくってきたかというと、5研究所の中での共同研究を加速化させるために文科省のプロジェクト給付を受けて、いわゆるアライアンス事業を並行して10年ぐらい走らせてきているんです。研究者がお互いを知る、誰がどこにいるかマッピングもできて、お互いの理解を深め合えるという強固な土台をつくってきました。その土台の上に、実は共同研究拠点ネットワークがあります。平成27年度の共同研究は、538件もの多くがネットワーク型の舞台で行われたんです。

たとえばの例で示すと、ある国立大学の研究者Aさんが多元研の研究者と共同研究しようとした時に、多元研の研究者が大阪大学の研究者Bさんとアライアンスで共同研究していたとします。そうすると、AさんもBさんと交流できることになるわけです。このアライアンスによって、いろいろな共同研究の組み合わせが行われている。それがある上で、共同研究拠点利用者にとってはアライアンスの中にも組み込んで研究できるという仕掛けなんです。5研究所WGが1年がかりで報告書を作成し、この仕掛けが評価されて、文科省の平成27年度共同利用・共同研究拠点の期末評価・理工学系(共同研究型)では、われわれの5研究所ネットワークは、最高ランクのS評価でした。ネットワークとしての機能がうまく発揮されていないと、ネットを組んでいてもバラバラなままで単独のものをただ合わせただけであれば、S評価を得ることはできなかったでしょう。ネットとしての機能がうまく発揮されて、1+1が2以上、5研究所ですから、5を大きく超えた成果が認められたのでしょう。

もうひとつ工夫したことは、組織の中に領域部会というものを設けたことです。5つの研究拠点にはそれぞれの顔があり、個性があります。そこでその個性を生かすために、それぞれの顔に対応した部会を設けています。それぞれの特徴を効果的に生かしながら、全体としてのポテンシャルを底上げしていきたいというのが狙いです。ただ設けただけでは何の変化もありませんが、そこに横串をどう入れるかということになります。そのために他の4研究所の方に委員として入ってもらっています。ただのオブザーバーではなく、具体的なアイデアや対策企画などを出してもらい、結果的に5研究所の融合がさらに進むようにしています。

こうしたネットワーク型共同研究拠点としての取り組みによって、一研究所単独よりメリットがあることは、新しい学術分野への取り組みを一体として加速化できるということです。研究者が交流できるさまざまな場が飛躍的に増える、新しい画期的な研究素材に出会える機会が増える、研究に対する人材のデータベースが増える、という一研究所ではできないことが数々できています。

もうひとつは教育の面で、院生の人たちが飛躍的にはばたく機会が増えるということが重要なポイントです。世界に通用する、多様性をもった人を育てる環境があります。ひとつの研究室の枠にこもらない、より広い世界が広がっています。たとえば研究者が学生をいっしょに連れてきて共同研究するような場合には、その学生はいつもの研究室とはまったく違った組織、文化、研究者と交流できる。こうした人材交流があれば必ず学生の質が上がります。研究の成果が上がる、社会貢献もできるようになります。われわれのネットワーク型共同研究拠点の今までの期間で、実際に学生の論文数が増えたり、学生の受賞の件数が増えてきています。

若手研究者が研究道場で切磋琢磨し、
世界に羽ばたけるように。

新しいステージで、計画していること。

平成28年度からわれわれのこの共同研究拠点は、第2期に入り、多元研が本部となります。もちろん第1期でうまくいったものはさらに伸ばしていくということが基本ですが、第2期では、さらに飛躍を目指した取り組みを行っていきたいというのが、多元研の考え方です。幾つか計画している要点がありますが、1つは村松所長も強調している人材養成ということについて、見える化を図っていきたいということです。若い研究者や学生をもっと系統的に育てていきたい。何かの仕掛けや新しい施策を出して、その結果が見えるような人材養成にしたい、ということです。

そのプログラムの1つがCOREラボといわれるものです。これは若手抜擢型の研究室を、各拠点に設けて長期滞在してもらう。若手の研究者に研究室の主宰をお願いして学生も連れてきてもらって拠点で共同研究を推進してもらいます。拠点では最大限のサポートをする、協力を惜しまない。研究代表者は誰でもというわけではなく、力がある人をまさに抜擢することがポイント。選定したら予算を手厚くつけて、2年ぐらい徹底的にやってもらう。その結果どうなるのか、われわれは見てみたいと思っています。来てもらうのは外の人でもいいし、5研究所の中の人でもかまわない。若い人にとっては、一種の研究道場という場で切磋琢磨してもらう。人材流動、国内での頭脳循環につながる。若い研究者が大きく羽ばたくのを、われわれができうる限りサポートするという仕組みです。

もう1つ次世代若手研究者養成プログラムというものを、新しいプログラムとして制度設計しています。これは未来を担う院生に研究課題を立案してもらって、企画書で研究計画を出してもらう。それを審査して採択したものについて拠点が全面的にサポートするというプログラム。ふだんのような教官の手伝いだけではなく、自分の頭で研究計画をたててもらい、始めから院生主体で動いてもらいます。その人たちの成長を見守りながらサポートしていけば、自ずといい成果につながるかどうか、プログラムの意義とか価値を判断できるだろう。これも人材養成のひとつの見える化だろうということです。

第2期の計画の2つめは、産学連携を重視するということです。共同研究拠点では基礎研究が基盤となっているので、あまり大きな企業との共同研究という形はとりにくい。しかしアライアンスの方ははっきりと産学連携を打ち出している。アライアンスにおいては企業も入った複数機関の研究でしかできないような新規材料創製などの研究成果が、新しいイノベーションにつながる仕組みになっています。したがってこうした仕組みも活用して民間企業との展開も目指し、産学連携によるいい成果につなげていきたいということです。

3つめは、国際化です。現状、共同研究拠点の方では海外からの利用者はそんなに多くない。ヨーロッパから来てもらうといっても旅費だけでたいへんという事情もあり、拠点の方でグローバル化という取り組みは難しい。これもアライアンスではできる。これまでもアライアンスの方では、国際化に対応してネットワークをつくったり、国際ワークショップなども実施しています。方向性としてはアライアンスの方での活動、委員会などに、拠点利用者の人も入ってもらうという仕組みを今つくっているところです。

このように、第2期においては拠点とアライアンスがバラバラではなく、一体となることによって、全体として大きな展望が見えるというとらえ方を考えています。しかもネットワークを組んでいるがゆえに、それぞれの単独拠点を大きく超えるような成果につながっていく。もちろん各研究所それぞれの成果にも目に見える形でつながっていくだろう。そういういい循環をつくっていきたい、というのが、われわれの目指していることです。

KAKIHANA, Masato

垣花 眞人

物質・デバイス領域共同研究拠点 物質創製開発研究領域部会長、
東北大学多元物質科学研究所 副所長、
同無機材料創製プロセス研究分野教授。理学博士。

1954年東京都生まれ。1983年東京工業大学大学院総合理工学研究科エネルギー科学専攻修了、1983年防衛大学校化学教室助手、1991年東京工業大学工業材料研究所助教授、2004年東北大学多元物質科学研究所教授。
2002年度文部科学大臣賞第28回研究功績者、2006年度粉体粉末冶金協会研究功績賞、2007年度日本化学会第25回学術賞、2007年度日本セラミックス協会第62回学術賞、2013年度文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)など。

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