北海道大学・東北大学・東京工業大学・大阪大学・九州大学の共同研究ネットワーク

物質・デバイス領域共同研究拠点

Research Highlights vol.3

4所長に聞く|西井準治/共同研究拠点のこれから、私の思い。

海外の若い研究者とつながる関係を築き、国際アライアンスも視野に。

学問分野の重心移動を、教育の場に
反映させるのは研究所の役割。

先端的な研究所こそ、新しい教育を実践できる。

北大電子研は、戦中の1941年に超短波研究室(1943年超短波研究所に昇格)として設立されたのが始まりです。医工連携により超短波が人体に与える影響を研究するというところからスタートしています。1946年には電気・物理に特化した応用電気研究所に変更され、1992年大幅な改組により電子科学研究所となりました。

電子科学研究所は総合理工系の研究所で、一つのことにしばられない幅広い研究を行っています。ちなみに北大には4つの研究所がありますが、電子研だけが総合的な研究所として歩みを進めています。

先端的な研究やさまざまな連携、共同研究などを進めることにより、新しい学際領域を開拓するということが基本的なミッションです。それとともに、北大の中での役割としては、この分野融合的な研究成果をどうやって教育に反映していくかが重要と考えています。

いま高校の教科書は昔とはまったく別物になってきています。それは学問分野が新しい方向に重心移動しているからなんです。大学の教員がそれにちゃんと追従しているかどうかは重要なポイントであると思います。研究所の役割は、世界最先端の研究をするのも大事だけれども、学問がどんどんシフトしていく中で、どうやってそれを教育の現場に反映させていくか。それは実は研究所がやらなければいけないことだと私は考えています。

北海道大学電子科学研究所。数理科学と光科学が大きな強みとなっている

私はかつて産総研に勤めていて、前身である工業技術院ではもともと軍事的に役立つようなことを研究していたものが、次第に産業応用に変化し、産業界と密につながる研究所になったことを経験しました。これと同じようなことがいま大学の中で起きてきて、学問の重心移動が起きているわけです。少なくとも北大においては、大学の中にある研究所が真っ先に動くべきと私は思っています。大学の中で最高のスタッフが先端的な研究を行っている、しかも産業界の現場の方にも開かれている、そういう機関こそが最も教育の現場に反映させるべき情報と理念をもっているはず。総合理工系の私たち電子研が、大学の中で惜しまずそういう役割を担っていこう、というのが私の考えです。

光と数理をベースとした共同研究を切り口に。

電子研の4つの研究分野の中に、大きな柱として数理科学があります。このことが電子研を大きく特徴づけています。昨今ビッグデータとか、データ科学という言葉が取り上げられることが多いですが、それぞれ関連性のないような現象を数理で解き明かすことによって、ある普遍性のある結果を引き出す。電子研には、そういう研究をする数理学者のグループがあります。そして、彼らの研究が物質科学や生命科学にずいぶん影響を与えています。今日の成果報告会でもプレゼンしていましたが、そういう数理学者の人たちをベースにして、物質と生命の分野の研究者が連携しながら研究している研究所、というところが一つ目のポイントと言えると思います。

もう一つ光科学という分野も非常に強い。
特に量子光学、光化学、プラズモンは電子研が得意とする分野です。

共同研究拠点は共同研究をするのがミッションであれば、この光と数理をベースとした共同研究が、電子研が関わる取り組みの最大の特徴だと思います。実際、他の4研究所とのこれまでの共著論文はほとんどが光と数理をベースにした研究です。

研究室や制度の壁を跳ね返して
海外留学、国際化に挑戦。

まとまった予算を活用して具体的に進める国際化。

電子研には弱みもあります。それは国際化だと私はとらえています。教育部局の方は、いきなり国際化と言われてもなかなかできるものではない。これは確かだと思います。カリキュラムがちゃんとあってそれにのっとって教育していますから。しかし研究所は、国際化と言われたら、さっと重心移動できなきゃいけない組織だろうと私は考えています。それが電子研は遅れている。ですから、研究所の国際化をどこまでできるか、というのが拠点第2期のひとつのポイントだろうと思います。

もちろん共同研究拠点の基本的な指針としては、グローバル化というメッセージは出されていますが、具体的な対策はこれからの取り組み次第です。電子研としては、アライアンス経費を活用して、思い切って国際化にハンドルを切ろうと考えています。

具体的には、海外の学生やポスドクを、たとえば数カ月間でも受け入れようとしています。将来、それによって国際的な共著論文が出るとか、国際連携が強まっていくことを狙っているわけです。海外の若い研究者と密につながる関係を築きたいということです。最終的には、アライアンスの5研究所と海外の研究者との共同研究を、拠点第2期で実現できればと思っています。

一方、5研究所の中で人が行き来するというだけではなく、若手研究者を海外に長期間派遣する、将来的にはもっと太いパイプでつながった海外とのアライアンスも組んでみる、そういう視点をもってもいいのではと思っています。
もちろん短期間の共同研究ですぐ成果が出るとは思いませんが、そういうところにまとまった経費を使って具体的に進めていくということを、考えていきたいと思っています。

海外留学、国際化のキーワードは、突破と挑戦。

今、海外留学をする若手が少なくなった、という現状があります。研究者は若いうちに1年、2年は海外に行くべきだと私は思っていますが、なかなかそれができにくい状況があります。たとえば任期付き助教の制度が施行されています。そうすると任期内に馬車馬のように働かないと次のポストに移行できないという状況に置かれて、1、2年海外に行ってこようという人はいなくなります。電子研でも海外に留学した人は少ないです。短期で海外の学会に行く人はたくさんいます。しかし、じっくり腰をすえて研究してこようという人はいない。だからこそ、数カ月でもいいから海外で生活して向こうの研究者といっしょに共同研究してもらいたいというのが強い思いなんです。

海外留学ができない理由がもう一つあります。研究所はラボ制をしいていて、それを存続させるためには、外に出にくいという雰囲気があります。

これらの事情を跳ね返して、思い切って海外に出ていかないと研究室自体が国際化していかないし、当然研究所も国際化しない。やはり若い人を海外に出す、また海外の若い人たちを呼んでくるというのが最も重要です。

学部生の時から海外に行った方がいいとは、思っています。北大の場合には「新渡戸カレッジ」という教育プログラムがあり、夏学期にはなるべく授業を入れないようにし、その間に学部生は海外に短期留学できるようにするという制度があります。ただその場合は研究ではなく、社会勉強に近いです。同じような考え方で若い研究者を海外に出し、また若い海外の人たちを受け入れ、実質的な共同研究を実施することが、今いちばん求められていることです。

この記事は、2016年4月26日、物質・デバイス領域共同研究拠点平成27年度活動報告会会場にて取材したものです。

NISHII, Junji
西井 準治

西井 準治

物質・デバイス領域共同研究拠点 拠点本部委員、
北海道大学電子科学研究所 所長、
光電子ナノ材料研究分野教授。工学博士。

1957年岡山県生まれ。1980年東京都立大学工学部卒業、1982年同大学院工学研究科修士課程修了、1982年日本板硝子(株)、2001年産業技術総合研究所光技術研究部門主幹研究員、2009年北海道大学電子科学研究所教授、2013年同研究所所長。2004年経済産業省経済産業大臣賞、日本セラミックス協会学術賞・最優秀論文賞、2012年光産業技術振興協会第27回櫻井健二郎氏記念賞、2008年日本光学会光設計優秀賞など。

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