北海道大学・東北大学・東京工業大学・大阪大学・九州大学の共同研究ネットワーク

物質・デバイス領域共同研究拠点

Research Highlights vol.4

4所長に聞く|穐田宗隆/共同研究拠点のこれから、私の思い。

新しい研究所体制で明日に向けての共同研究拠点活動に臨む。

ものづくりのプロ同士、
交流による新しい広がりに期待。

生命科学・バイオ領域もキーワードにして、社会実装につながる研究所に。

化学生命科学研究所は、実は今年(2016年)4月に前身の資源化学研究所から改組されたばかりです。資源化学研究所は、1939(昭和14)年、戦時中に開設された研究所で77年の長い歴史をもっていました。開設後しばらくして、人造石油などの研究をしていた燃料科学研究所を統合して、無機資源・有機資源・生物資源・高分子材料などの部門を扱う研究所となり、さらに新金属資源、触媒化学、エネルギー資源、光化学部門などを増設してきた経緯があります。2000年にノーベル化学賞を受賞された白川英樹先生は、東工大出身でこの資源研で助手をされていたんですね。受賞の対象となった導電性高分子であるポリアセチレンというのは助手の時に研究していて発見されたものです。このように日本の科学の進歩に大きく貢献してきた実績を誇る研究所です。

私が資源研に入ったのは1984年でしたが、そのころすでに化学を基盤とする総合的な研究所という構成になっていて、大事なところはほぼカバーしていました。そうは言いながらも、時代によって力を入れることが変わってくるとは思いますが、私が来たころは触媒の研究が盛んだったように思います。

今回の改組は、この資源化学研究所を母体として、2016年度から発足した科学技術創成研究院を構成する一研究所として新たに生まれ変わったものです。今まで研究所は部局の一つで言わば学部と同列でしたが、今年度新たに科学技術創成研究院という上部組織が、新たな研究領域の創出、人類社会の問題解決、および将来の産業基盤の育成を使命として設けられました。私たちの化学生命科学研究所は、その研究院を構成する研究所として新たに出発したということです。

改組された新研究所のミッションは、分子を基盤とする化学および生命科学に関する基礎から応用までの研究の深化、発展を通じて、より豊かで持続可能な社会の具現化に貢献していくということになります。さらに私なりにわかりやすい、ざっくりとした言い方をすれば、近未来的な目標をたて、ここで得られた研究成果を社会問題解決のために応用展開するという、いわゆる社会実装などにつながる研究所になっていきましょう、というのが新しいミッションです。

改組による具体的な変化のキーワードとしては、近年進歩が目覚ましい生命科学・バイオの領域も大きな柱の一つとして取り入れたということがあげられます。バックグラウンドの有機化学、無機化学、物理化学などを大事にし、さらにバイオも入って、大事なポイントをおさえながら、世の中の動きに反応し、あるいはリードしながら研究を進めていくというスタンスです。私自身は、あまりがちがちにしばらないような方向性で進んでいけたら、と思っています。教授採用なども大枠で候補を決めて、光っている人を選ぶ、そういう選び方をしていたら、自然にバイオ関係が多くなってきたというわけです。ここ3〜4年ぐらいは創薬分野、バイオセンサー分野などが動きとして出てきていると思います。

東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所。生命科学・バイオ領域を柱に加えて持続可能な社会の実現に貢献する。

いろいろな局面を見る視野をもち、懐を広くして臨むこと。

当研究所における共同研究拠点としての取り組みという面で、具体的にどんな研究が特徴的なのかというのは挙げにくいと思いますが、基本的にはものづくり関係の研究が多いと思います。ものづくりの場面で、現在では社会的要請もあり、基本的には出口イメージをきちんともちながら研究を進めている、というのが現状の姿だととらえています。受け入れ側のこちらも、ものづくりのプロであるし、共同研究に来ていただく方も、ある分野で力のあるプロなので、違った種類の力が発揮しあえるプロ同士の交流であれば、すごくいい方向につながるのではと、思っているところです。

私は思うに化学というのは、なかなか思うようにならないことが多い。しかし、それがまた面白い。だから、少し脇道にそれたりして、そこでいいものが見つかったり、結果的に新しい広がりをもたらすことになったりすることもあるわけです。化学者たる者はいろいろなところをにらみながら、懐を広くして臨まないといけない。視野が狭いとその場はうまくいっても、大事なことをとりこぼしたり、次のフェイズに進めなかったり、後々行き詰まりが出てきたりします。いろいろなことを見る視野が大切です。目先の研究のことだけではなく、本質的に何が大事かを考えながら進まないといけない。個々の研究にあたっては、そんなことを大切にと考えていますが、それはたぶん私は共同研究拠点としての取り組みという場面でも、同じことが言えるのではないかと思っています。

海外で学びたいという若手研究者や院生は
研究所が積極的にサポートする。

課題や改善点をとらえ直し、今後の展開に生かしていく。

今後の取り組みの中で留意しないといけないことの一つは、やはりCOREラボですね。昨年度、第1期の最終年度に際して、第2期に向けてということで、共同研究拠点のどの研究所もそうですが、去年1年間、パイロットラボというのを行ってきました。第2期で本格運営をする前に、課題や問題点などの洗い出しなどを行いました。うまくいく点、うまくいかない点を見つめながら、それを今年度からの運営に生かしていこうと、練習してきたわけです。

昨日のキックオフミーティングでも、どなたか話しておられましたが、昨年はとにかくプログラム自体も新しいので、受け入れ側も何をしてほしいかはっきりしない、応募する方も何がやれるのかわからない、という状態で始まったということもあり、条件が厳しくてなかなか難しい、忙しい業務がある方に来ていただくので長期滞在は難しい、などいろいろな課題があったことは否めません。結果としては、いろいろな課題や改善点も見つかったので、今後に向けては、そういうところに陥らないように、あらかじめ研究者の立場などをしっかりと考慮するなど、ていねいな向き合い方をしていく必要があると思っています。

ものづくりの研究とは、実験室を用意したので研究をしてくださいと言っても、すぐにできるわけではないでしょうし、やはり設備機器の利用や学生も含めたスタッフとのコミュニケーションも必要になることだと思っています。そうすると、たとえば測定系の研究者の方であれば、測定機器のノウハウを知っているでしょうし、拠点側にある器械でも私たちはふつうの基本的な扱いしかしないけれども、そういうプロの方が来ていろいろプログラムを組むと、私たちがふだん思いつかないようなことまでわかる、というようなこともあるような気がします。測定系の人はやりやすいかもしれませんね。そういう意味での今後の展開に、大いに期待をしているところです。

学生も、若い研究者も、一度は外国に出て学ぶべき。

学生が関心のある分野の国際会議に行ってみたいと言ったら、そのための支援をする。あるいは研究費を持っていない助教さんに招待講演依頼などがあった場合に、外国渡航の支援をするなど、できるだけ若い研究者が外国を体験するサポートを行っています。サバティカル休暇は外国では一般的ですが、若手の人に2カ月や3カ月間、外国の研究機関に滞在してもらって研鑽を積んでもらう、という仕組みを活用してもらえるようなサポートを積極的に行うというのが、私たちの研究所の姿勢です。

2016年4月の東工大の入学式で、三島良直学長が式辞をすべて英語でスピーチしたと、ニュースで話題になりました。学生のうちに一度は外国に行きなさい、最低3カ月は留学してほしい、海外で自分磨いてほしいという三島学長の強い思いがあり、海外に行くには語学の勉強も重要なキーになる、というメッセージです。

研究者、とくに若い研究者においても基本的に外国に出て学ぶべきだという動きだと思います。たとえば院生のサポートは大学院がやることかもしれませんが、もし私たちの研究所がサポートすることで結果的に大学全体の方針にも合致し、また研究所の活性化につながるのであれば、ぜひ院生のときから外国に出ていくようなサポート体制を強化した方がいいと、私は考えています。そういう道筋が開けることによって若い研究者に元気になってもらうのは、いいことだと思っています。

この記事は、2016年4月26日、物質・デバイス領域共同研究拠点平成27年度活動報告会会場にて取材したものです。

AKITA, Munetaka
穐田 宗隆

穐田 宗隆

物質・デバイス領域共同研究拠点 拠点本部委員、
東京工業大学科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 所長、
教授。理学博士。

1957年福岡県生まれ。1979年 京都大学工学部合成化学科卒業、1981年同修士課程修了、1984年大阪大学大学院理学研究科高分子学専攻博士課程修了、同年東京工業大学資源化学研究所助手、1995年同助教授、2002年同教授、2012年同研究所所長、2016年同科学技術創成研究院化学生命科学研究所教授・所長。
所属学会/近畿化学協会・有機合成化学協会・触媒学会・イギリス化学会・アメリカ化学会・日本化学会など。

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